アオキ
こんばんは。さて、犬の次はサルの話をしようと思うのですが。
イワホリ
はは!コーネリアス97年の名盤「Fantasma」が、2010年にリマスター盤としてリリースされる、しかもそのリマスターを手がけるのが、砂原"まりん"良徳という、この世代は食いつかざるを得ないビッグリリースが。っていうか、13年も前のアルバムだって事にショックを覚えなかった?
アオキ
いやあ、ショックですよ。リアルタイムで新星堂の予約票書いた記憶のある盤が、リマスターされるってのは。まあ「またかよ悪徳ポリスターリマスター商法め!」って思ったら、ワーナーからのリリースだってのがさらにショックだったけど(笑)。
イワホリ
でしょ。更に言うと69/96とか、元相方の「Life」に至っては人生の半分連れ添ってるっていう!
アオキ
えー、あれ1995年?
イワホリ
うん、「LIFE」に至っては94年。「First Question Award」も。渋谷系も遠くなりにけり、ですよ。
アオキ
「渋谷系を知らずに僕らは育った/渋谷系を知らない子どもたちさ *1 」
イワホリ
うん、だからホント笑い事じゃなくってそういう若い層に、、、駄洒落じゃないけれど(笑)。
アオキ
(失笑)
。
イワホリ
だから、「聴き比べ」とかじゃなくてこのリマスターで初めて「Fantasma」聴く人の方が多いのかな、と。
アオキ
「point」あたりから聴きはじめた人は、これで初めて聴く人もいるんだろうなあ。
イワホリ
コーネリアスってこのアルバム以降のモード・チェンジがあまりにも鮮やかだからさ、それこそ「sensuous」とかの枯山水な感じと、パーフリって結び付かないじゃない。
アオキ
枯山水て(笑)。じつは「THE FIRST QUESTION AWARD」買ったのって、実はファンタズマより後なの。これ聴いてようやく「もとパーフリ」ってのを納得できた覚えがある(笑)。
イワホリ
あ、そうなんだ? でも、90年代後半当時でもそういう違和感はあったよね。俺も思い返してみると、まず最初にやっぱ小沢君の「LIFE」があって。小沢君が昔やってたフリッパーズ・ギターの相方だった小山田君がコーネリアスっていうのをやってます、ていうのを知って。で、ビニールジャケットの「69/96」を最初に手に取ったのかな。で、「なんじゃこりゃあ?」っていう(笑)。
アオキ
やっぱそうだよね。ほとんど同じ流れだけど、わたくし盤を手に取る前に、HEY!HEY!HEY!で「なんかビデオカメラ持ってうろうろしてる変な人」を見てしまったのが運の尽きで。しばらく「あの変な人」呼ばわりでしたよ。
イワホリ
小沢君ともフリッパーズとも似てない、学校で流行っている小室系やビジュアル系とも違う、聴いた事の無いような音でさ、「これをカッコいいと思えるまで聞き込まねばならない」みたいな強迫観念にかられて聴いてた、正直。
アオキ
ふははははは!なみだぐましいな!
イワホリ
「コレにノレなきゃ渋谷に遊びには行けない」みたいなさ。まぁでも、やっぱり苦行に耐えられなくて、一度中古盤屋に売ってるの(笑)。
アオキ
売るなよ!
イワホリ
「渋谷に行くつもりじゃなかった!」
アオキ
まあ、でも、パーフリ→小沢→コーネリって並べておきたいのアタシ!って意識はあったな、確かに。その手前にスパイラルとエルアルとミネコとカヒミとカジくんも。
イワホリ
でもさ、やっぱ雑誌とか見てると絶賛の嵐だし、当時ギタマガとかGIGSの表紙を飾る程でさ、やっぱもう一度修行すっかぁ、と思って買い直したの。売った店に行って(笑)。
アオキ
コウノトリポストのような話だな…。
イワホリ
しかもそっからエイプとか裏原宿ファッションが勢いづきだして、"BOON"とかにも小山田くん出たりしてたじゃん?俺、サファリハットとか真似して被ってたし。
アオキ
わははははは!
イワホリ
それに、古着のパーカか、アノラック(笑)。
アオキ
コーデュロイの赤い膝の出たパンツとかも?
*2
イワホリ
好きなファッション雑誌は「ジャパン」と「バンやろ」です!(笑)
アオキ
ああ、なんだろうこの胸の痛みは…。
イワホリ
大幅に脱線3したけれど、そんなこんなで音楽的には本当に好きなのか?とクエスチョンマークが付きつつ、初めてリアルタイムで聴いてこれは!!っていうのが、「ファンタズマ」だったんだよね、多分。
アオキ
多いに賛同。バカ正直にあの初回特典のイヤホンつけて聴いて、腰抜かしたもの。他にもバイノーラル録音だとか、2枚同時再生で楽曲が成立するだとか、いろいろトリッキーな仕掛けもあったけど、単純に聴いてて楽しかったなー、って記憶があるな。
イワホリ
そうそう。俺とか当時イヤホンで音楽聴く習慣がなかったし、あと、「スター・フルーツ・サーフ・ライダー」の2枚同時再生*3 とかもさ、普通出来ねえじゃんあんなの(笑)。
アオキ
どうやって聴いたんだっけなあ。いっかいカセットにダビングして、ラジカセと親のコンポで鳴らした様な気がする(笑)。
イワホリ
偉い! 俺とか完全に放棄してた。そういうギミックとか小難しいことは抜きにして、頭から後ろまで、飽きずに楽しく聴けるアルバムをコーネリアスが出した!てのが当時の印象だったんかなー。
アオキ
「あんな苦行を強いた彼が!」
イワホリ
「地球あやうし!」とか本当に聴いてて危うくなったもん、頭が(笑)。でも改めて思い返しても凄く実験的というか、いままで聴いた事の無い音が鳴ってるし、凄い情報量だし、かつポップっていう。そりゃ世界に受けるよっていう。
アオキ
裏を返せば日本じゃ受け入れられる土壌がなかったのなあ、とも思うけどねえ。時はいわゆる「花の97年組*4 」ではありましたが。
イワホリ
そこと括るのもまた違うんじゃない?
アオキ
いや、もちろん違うのはわかってんだけど。13年経ってみても、当時の立ち位置がわからない作品だなと思って。
イワホリ
確かに、不思議なポジションだよね。それこそ「ROCKIN' ON JAPAN」も「クッキーシーン」も「smart」も表紙飾れます、っていうのは彼くらいだっただろうし。
アオキ
「Relax」も。あ、あれはAPE特集だったか?
イワホリ
そしてトラットリアというレーベルのオーナーであり、看板アーティストでもあるっていう。
アオキ
それでいて爆発的な人気を誇らない!という奇矯さが、ねえ(笑)。
イワホリ
そもそもがマニアックじゃない?「猿の惑星」の偏愛っぷりにしても。誤解を恐れずに言うと日本におけるソニック・ユース的存在っていうか、サブカルチャーの中のメジャーであるっていう、それまでいなかった存在だよね。
アオキ
確かに。音楽とは全然違う文脈でもあちこち出てたもんね。ええと、あれだ、「お山の大将」!ちょうポジティブなイメージで使いますけど。
イワホリ
(笑)。ええと、目線が97年前後を彷徨ってますが、そろそろ2010年の今に戻りましょうよ…。
(後編に続くよ!)