the Dovesのジミ・グッドウィンは、かなり早熟のパンク少年だったようだ。いや、早熟というか、英才教育を受けたというか。初・生クラッシュははわずか8才!

『Cost of living EP』が出た時でさ。俺の親父はクラッシュに相当入れ込んでて。で、俺のバースデー・プレゼントだっつって、マンチェスターのアポロって箱の、クラッシュのライヴに俺を連れて行ったんだ。アポロに着いたときに見た、外の看板を今でもはっきりと思い出せるよ。"Live Tonight - The Clash"ってね。
ジョー・ストラマーはすげえ尖ってた。ギターをステージ上でぶん投げ回してたね。俺たちはバルコニーの席に座って見ていたんだけれど、ライブの終わりのほうじゃ箱中狂ったように盛り上がってね、席はみんなひっくり返されて、あちらこちらに飛び散ってたな。親父も、『おう、早くここからお前を出したほうがよさそうだぜ』なんていう始末でさ。
"I fought the law"の最初のラインは、必殺の一行だよな。"Breakin' rocks in the hot sun"-クソ素晴らしい響きさ。このラインの後じゃ、何だってできる気持ちになるんだ。

うん、まさに。これこそクラッシュ節!と言いたくなるような、全身の細胞が目覚める音のような演奏と、シニカルかつ力強い歌詞。しかし何より、驚きというか未だに信じられないのが、この曲がジョー・ストラマー/ミック・ジョーンズのどちらの手によるものでもないという事実だ。

最近になって"I fought the law"のオリジナルは、ソニー・カーティスだったって知ったんだ。クリケッツのギタリストね。不思議なもんだけれど、これ、バディ・ホリーのしたどの仕事よりも、優れてるんだよね。そして、これもまた不思議なんだけれどボビー・フラーも22歳で死んでる。

僕のような後追いも後追い、CMソングで初めて聴いたというような世代にとっては、この曲こそがクラッシュの代名詞、のように感じている人が多いと思う。最近のバンドがカヴァーするときも、「クラッシュの曲」をカヴァーした、って認識だろうし、つうか、カヴァーする側も、クラッシュのヴァージョンを聴いて、自分たちもカヴァーしたって人が多いんじゃないかな。歌詞も歌詞だし。しかしこの曲自体は50年代には既に歌われていたというのだから!

僕は常々、オリジナル・ナンバーよりも、カヴァー曲にこそバンドの本質が宿っているのでは、と思っている。それは、演奏者自身のリスナーとしての音楽への愛情や、自分の歌う、鳴らす音楽の出自がよりはっきりと見えるから。そこには、小手先の引用とは違う本気の愛情があり、だからこそ、30年、原曲からは50年以上経った今でも、我々を踊らせる力がある。

■I fought the law



(c) 2007-2008 exhivision some rights revered .