イワホリ そうそう、360ディールズって知ってる?
アオキ ん、なに?
イワホリ レコード会社とアーティストの新しい契約の形態なんだけれど、360度という通り、レコードの売り上げだけじゃなく、ライブとかマーチャンダイズの売り上げも含めてレコード会社とバンドが契約するの。Tech Crunchの記事)
アオキ へええ。
イワホリ 確か、マドンナが通常のレコード会社と離れて、ライブ・プロモーションの会社と全権契約を結んだのがとっかかりかな。
アオキ あ、あったね、そういうニュース。ちょうど去年の今頃にさ、イン・レインボウズ周辺の話題として「CDセールスに頼らない/ライヴやグッズで収益をあげるバンド運営のシステムって話がよく出てたじゃない。それがアーティスト主導じゃなくてレーベル主導で行われるのはちょっと驚くなあ。
イワホリ それを搾取と感じる人もいるだろうけれどね。
アオキ うん。グッズとかつくる現場を見てるから反射的には「搾取だ!』って思ったけれど、よくよく考えると、そうでもない気がする。「いいバンドなんだけど宣伝がさあ」ってよくある話だもの。
イワホリ メジャー・レーベルの、というか、放送権力を利用するっていうのは、今のところまだまだ有効なプロモーション手段だしさ。セックス・アンド・ザ・シティだのグレイズ・アナトミーだのって海外TVドラマあるじゃない?あれ系に曲が使われることでブレイクするUSインディのバンドって、今凄くおおい。
アオキ あー。
イワホリ 面白い話ではないけどね。
アオキ 10年前くらいの国産ドラマ全盛期みたいな?
イワホリ んー、ちょっと違うと思うんだけど(笑)。むしろ最近のアニメ番組への、若手ロックバンドの異常なタイアップとかに近いかもしてない。
アオキ ああ、それは納得。こないだ「NARUTOに使われたバンドはブレイクする」って話してたな、生徒と(笑)。
イワホリ そうそう、そういう感じ(笑)。だから、「OKコンピュータ」じゃないけど、利用されてしまうことのリスクとか違和感をちゃんと持ってるかが大事だと思う。
アオキ バンプがワンピース、くらいまでは爽快でさえあったけど。
イワホリ そうかい?
アオキ ヘタなシャレはよしなシャレ!……ええと。DOESが銀魂って個人的にはすごく違和感あるんだけど、もう何クールもそうなんだよね。修羅!
イワホリ ははは!でさ、ちょっと話を戻すとさ、いわゆるインディ・レーベルと呼ばれるところは大体独自のウェブショップを持っていたりするし、そういうところにはなるべくお金を直接落とすのが、おそらくは一番ベストなんだろうし。さっきのリンクの記事のようにライブやグッズのプロモーションとして、音楽を配るっていうことはオルタナティブ(久々語義通り)な手段になってきている、ていう実感はあるんだよね。オブ・モントリオールの話はしたっけ?
アオキ うんにゃ?
イワホリ 彼等のTシャツって、タグに、アルバムのフリー・ダウンロード・クーポンが付いてるの。
アオキ へえ。
イワホリ Tシャツはもちろん、トートバッグや缶バッジにいたるグッズ全てに!
アオキ うわあ、徹底してるなあ。
イワホリ いちいち可愛いんだけどさ、で、実際のアルバムのアートワークも凝っているのよ。つまり、アートワーク自体も、ジャケットパッケージを買ってもらうっていう認識に近いんだろうね。
アオキ なるほどなー。
イワホリ それはそれでいいと思うんだけれどね。Tシャツ買って音楽も聴けるし!てので十分な人はそれでいいかもしれないし、DJで使いたいとか音質が、ってなればヴァイナルやCD買えばいいし。実際彼等は極端にしても、アナログ・リリースにMP3クーポン付き、ていう販売形式はこの1年くらいで凄く増えた。
アオキ 潔いなあ。
イワホリ 選択肢があるってことは、凄く大事だと思うんだよね、やっぱ。
アオキ どっちも生かす折衷案、ってかんじですごく賢いやりかただよね、それって。
イワホリ そう。しかもオブ・モントリオールって、ポリヴィニールっていうインディから出してるからね
アオキ いい名前だ。。。
イワホリ 殺害塩化ビニール *1じゃねえぞ。
アオキ うわあ、なつかしー(笑)。
イワホリ まぁ、でも、実際スマートだと思うし、そういう心意気に、お金って払いたくなるもんだよね、実際。
アオキ そうだねえ。そういうスマートさのかけらもないmoraにお金払いたくなくてアロウズのageha *2 は未だに未聴ですからね(笑)。
イワホリ 同じく(笑)。だから、08年の俺裏テーマは、お金の落としどころを考える、でした。
(話の核心はこのへんから。まだまだつづくよ!)

エキシビジョン名物、イワホリの脚注。余談多し。

*1 殺害塩化ビニール
 「殺害と書いてゲテモノと読む!」とまで評される、日本のインディ・レーベル。極悪狂人団、猛毒、殺(kill)。。。と、バンド名を見るだけでも、このレーベルのオリジナリティがしみじみと感じられます。社長のTHE CRAZY SKB氏は、チバユウスケと高校の同級生だったとかなんとか。

*2 ageha
アロウズの、ダンス・ミュージックとしての魅力を濃縮果汁還元したインスト・ナンバー…ながらなんと配信限定、彼等の所属レーベルはiTunes Storeに楽曲提供せず。。。ということで、未だiPodユーザーには購入の、ていうかマックユーザには視聴することすら許されない、至高にして孤高の名曲。


001 : イワホリ、ようやくradiohead来日を振り返る 2008-12-26
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003 : オマケ化する音源、何にお金を払うのか 2008-12-28
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