イワホリ Kid A以降の音楽として、欧米で大きな流れとなったのがロックンロール・リヴァイヴァル。世間的な皮切りは、2001年のNYに颯爽と現れた、ストロークス。彼らの場合、先にイギリスのラフ・トレード*1 発で火が点いたんだけれど。更に翌年、リバティーンズがデビュー。とにかくこの2つがデカイと思う。特にリバティーンズは、今出て来ているUKのギターバンドで影響を受けていないのはいないんじゃないの。
アオキ 「リバティーンズ以降」なんていわれちゃうくらいだものね。
イワホリ あと、これもさりげなく、かつ力強く言っておくと、2001年、アッシュ、"フリー・オール・エンジェルズ"で二度目の全英制覇!(泣)
アオキ おおう(涙)。
イワホリ これね、でもひいき目無しにギターバンドが再びチャートの頂点に立った、ていうのは重要でさ。で、ようやく歴史だけじゃなく、音楽の話になりますとですね。ストロークスやリバがやったことって、まさにロックンロール・リヴァイヴァル、ロックに、多彩な8ビートのリズムを取り戻したってことが本当にでかい。
アオキ 「おかえりなさい!8ビート!」てかんじよね。
イワホリ んーと、お帰りなさい、ていうよりは、あ、ども、はじめまして、て感じに近いかも(笑)。
アオキ あ、そう?
イワホリ えっとさ、凄く頭悪い聞き方するけどさ(笑)、ちょっと、8ビート、擬音語で表現してみ?
アオキ えーと(笑)、どんたっ、どどった♪
イワホリ 流石(笑)。じゃあさ、もうちょい、リズムマシンっぽくなると?
アオキ どんたっつた、どんどんったっつた。…ってなんだよ、「リズムマシンっぽく」って(笑)。
イワホリ ええと、そこかなり近づいて来た(笑)じゃあさ、もう一回!今度、KISSっぽく!
アオキ えー!無茶振りにもほどがありますよ(笑)。
イワホリ 頑張ろうよーもうちょい(笑)。ドン、タン、ドドタン♪って、こんな感じじゃない?
アオキ うぃー、うぃる、うぃー、うぃる、ろっきゅー♪
イワホリ …でね、何が言いたかったかと言うとですね、「タ」とか「タン」で終わるか、「ッ」で終わるか。この違いだと思うのよ、ロックが失ったロックンロールって。要はさ、シャッフルなんだけれど四分音符を2回なのか、三連の真ん中を抜くのか。ニュアンス分かる?
アオキ うんうん。自分の中のリズムが跳ねてるんもよくわかった(笑)。
イワホリ ギターで言うと、ダウンピッキングで2回なのか、オルタネイトで一回空振りするかっていう。ロックンロールって、もともとはジャンプ・ブルースとかR&Bっていう、ジャズから派生した音楽で、更に言うと、そこにはブルースっていう下地がある。で、ブルースの基本って、12*2 じゃない。
アオキ うん。
イワホリ で、単純な算数の話なんだけれど、3と4は12の中にあるけれど、8はない。4を更に細かくしたのが8ビート、更に刻んで16、ていうところなんだよ。で、ジャズなんかの基本である4ビートっていうのも、四つ打ちっていう感覚とは別物で、さっき言ったような、二拍三連のリズムからの流れで生まれたもの。
アオキ 三連のリズムって円だから、自然と横に動くよね、体が。
イワホリ で、リバとかストロークスって、その頃のリズムに基づいたロックンロールや、それと呼ばれる以前の音楽を参照点に、自分達の音を作っていたってのが、従来のダンス・ビートと異なるところなのよ。その辺、更に分かりやすいのが、フラテリスの1stかな。
アオキ なるほどなー。先祖帰りっていうと語弊があるけど。きちんと掘りなおす感じよね。
イワホリ "Henrietta"でも"Flathead"でもなんでもいいんだけれど、明らかに、拍の取り方がただ4つ、8つじゃないでしょ。
アオキ むしろ、再検証、だよね。はじめて聴いたとき、知ってるようでなんか違う、踊りにくいビートだなあ、って思ったもんな。
イワホリ 8ビート、ていうときっちり8回手を叩きましょう、てのでもないじゃん。4つ打ちの良いところでも悪いところでもあるのは、そこがあまりに規則的すぎるが故、逆にロックンロールの奔放さが無くなっちゃうところ。で、2008年の今、リズムの多様性ってところにいくロックンロールバンドって、どれだけいるんだろう?ていうのが逆に疑問になってさ。「8ビートの復権!」とまでは言わないけれども。繋げやすい、踊りやすい、ていうだけで4つ打ちものだけに走るのも、面白くないかなー、ていう自戒も込めてね。
(どん、たん、どっどんたん♪)

エキシビジョン名物、イワホリの脚注。余談多し。
*1 RoughTrade
イギリスはロンドンの老舗・インディレーベルとレコードショップ。毎年リリースされるコンピ"counter culture"シリーズや、毎週末開催されるインストア・ライヴ等、UKロックの旬を発信し続けてます。
*2 ブルースの基本は、12。
ブルース進行の基本は、12小節単位のコーラス。歌詞で言うと、最初の4小節のフレーズを2回繰り返し、最後の4小節で締める。いわゆる3コードと言われるコード進行も、はじまりはブルースから。

000 : ロックで踊りたい? 2008-07-01
001 : ロック2000年問題(1) 2008-07-02
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