イワホリ で、なんか一気に喋り倒してしまったのですが、ここまでの話で、アオキ側から何か合いの手なり、カウンターパンチなりはある?
アオキ そうねえ。ホリは「ロックンロールの奔放さ」というけれど、リスナーっていうか、ライヴなりクラブのフロアを思い返してみると、いわゆるロックバンドって、どれもこれもタテノリ一辺倒だなあと思うのですよ。ジャンプするかoioiっていうか。初めてスカパラ見に行ったときの衝撃たるや(笑)。
イワホリ ああ、スカのライブはまた、違った様式があるからね。
アオキ スカダンスを踊る女子はもれなく可愛い。
イワホリ そうか?(笑)
アオキ そうでもない?(笑)
イワホリ んー、ピペッツ踊れる子の方が好き。っていう話でもねえか(笑)。
アオキ まあいいけど(笑)。
イワホリ それこそピペッツじゃないけど、今のアオキ先生の指摘てのは、まさに、ロックンロールがロックになってしまった、ていうところでさ。ええと、weezerのbuddy hollyのPVを見てみましょうか。
アオキ TODAY*1 でもいいですかね(笑)。
イワホリ いいけどさ(笑)。
イワホリ で、続いて、おなじ曲の、実際のライヴ風景を見てみましょう。
アオキ リヴァース、のなかさんに似てるなー(笑)。
イワホリ そこかよ(笑)。じゃなくて、つまり、アオキの言いたいことは、このオーディエンスの反応でしょ?
アオキ そうそう。あと、クラブでスピンされた時と、ライヴで演奏された時のあまりにも違うフロアの反応とか。"マストピープル"だの"ナイトコール"が、深夜のフロアでスピンされた時の殺傷力たるやないじゃない?だから、初めて生でアロウズを見た時に、あまりの落差にびっくりしたんだよね。
イワホリ ライヴハウスだと、ポジショニングの問題もあるだろうけどね。
アオキ 去年のCDJとかさ、ライヴよりダイノジ*2 がDJブースで鳴らしてる時の方が盛り上がってんだもん。
イワホリ うーんと、そこには幾つか理由が考えられるんだけれど、歴史的な話をまた持ち出すと、ロックンロールがロールしなくなった一つの契機は、ハードロックと、パンクだと思う。
アオキ ふむ。
イワホリ まず、一つはパワーコードなんかがギターリフをベタ塗りしていったあたりからだと思うんだけれど。
アオキ それこそ、ドン、タン、ドドタン、の時代か。
イワホリ 同じパワーコードでも、ピート・タウンゼントは腕ぶん回して風を起こしたでしょ?でも、その後のハード・ロックギタリスト達は、爆破スイッチみたいなもんだからさ(笑)。
アオキ …ボカーン!(笑)。
イワホリ 音に厚みを出すか、それか刻むかってところに特化されていったからさ、必然的に、跳ねる空間が無くなって来るわけです。
アオキ なるほどなあ。KISSでかろやかなステップ踏めないもんね(笑)。
イワホリ パンクロックだって、音の構成的にはハード・ロックと変わらないからね。上手いか下手かくらいで。で、ラモーンズですよ!金太郎飴とまで言われる、黄金の3コード/8ビート。
アオキ うはははは(笑)。
イワホリ ラモーンズのデビューって、ロンドン・パンクなんかよりも早いのね。 彼らが76年。で、ピストルズ結成がその年の11月って言われてるから、大西洋を渡って彼等の音が伝わってるんだよね。で、ラモーンズの音って、もうウイルスみたいなもんだからさ(笑)。
アオキ 感染力ばっつぐんなのな(笑)。
イワホリ なんせ、DIYだから、パンクの精神って。「俺にも出来る!」(笑)
アオキ と、おもったワカモノ/バカモノが世界中に溢れかえったのね(笑)。
イワホリ そうそう。パンク=8ビートってのは結構、根が深いと思う。で、そっから生まれたのが、例の縦のり、ポゴダンスですよ。
アオキ POGO!
イワホリ 通説ではシドが、まだピストルズのおっかけだった頃に後ろからステージを見る為に飛び跳ねた、て言われてるけど。ロックで踊る、のが横から縦に移る瞬間ってのは、このあたりなのかもねー。まあ、空間が無くて上に跳ねた、て感じもあるだろうけどとにかく、ロンドン・パンクとかって期間的には5年もないのに、その影響たるや後世まで根強いんだよね。
アオキ 確かに。横乗りのロックンロールって、すっかり古いものにさせられちゃったよね、ここで。
イワホリ けど、そんな短い期間でも、リズムの更新に挑んでいたパンクバンドがいてさ。それが、クラッシュ。
アオキ clashってさ、そうとう長い間"I fought the law"のイメージしかなかったのよねー。X-TRAILの功罪たるや。
イワホリ ちなみに、"I fought the law"もカヴァー曲ね。
アオキ わ!そうなの?
イワホリ オリジナルのバックは、クリケッツという、バディ・ホリーもかつていたグループで、クリケット=コオロギという名前を見て、俺たちも昆虫の名前をバンドにしようぜ、て盛り上がってたリバプールの青年たちが始めたのが、ビートルズ。
イワホリ 別のグループだけれど、65年頃のカヴァーがこれ。
アオキ うわ、見事に横!
イワホリ でしょ?
アオキ すごいすごい。
イワホリ で、クラッシュの話はそれよりも、ジャマイカのリズムに接近していったてのが、まずデカい。
アオキ ふむふむ。
イワホリ あのローリング・ストーン誌が80年代の最重要アルバムに選んだ「ロンドン・コーリング」に、"Revolution Rock"ってタイトルの曲があってさ。それはもろ、レゲエの曲なんだよね。
アオキ それを"Revolution Rock"とよぶのか。
イワホリ 聴いたことない?
アオキ ないない。
イワホリ

もうね、歌詞も凄い。最初の歌い出しが"Revolution rock, this is the brand-new rock"*3 だからね。

アオキ あ、しってるわ、この曲。ヒサシがどっかでかけてた(笑)。
イワホリ ははは!でもそう言うことなの。ビーチズのクラッシュって、明らかにこれ以降でさ。「パンク・ロックのクラッシュ」て言われて思い浮かぶのは、きっと1st や、ピストルズと一緒くたになったイメージなんだけれど。
アオキ そうそう、わたくしのなかではそうなんだよね。"I forgot the law"のあの雰囲気。
イワホリ だいたいさー、ロンドン・コーリングのジャケットの元ネタは知ってるよね?
アオキ 衝撃の縦書きタイポはプレスリー!
イワホリ そうそう。元々ジョー・ストラマーにはロカビリーの素養もあったんだけれどさ、そこと並行しながら、ロックンロールと同じくジャズを母に、ジャマイカで育まれていったレゲエやスカのビートをロックンロールに混ぜようとしてた、てのは、後々の音楽に凄い影響を与えてる。
イワホリ それこそ、みんな大好きJerry Lee Phantomの"ザ・クラッシュ"や、その後のビーチズの活動なんてのはもろクラッシュだし。ヒサシさんがDJやってるパーティの名前は「ディスコ・サンディニスタ」だし。あと、ダンス・ミュージックの世界ではファットボーイ・スリムことノーマン・クックが、若い頃クラッシュの追っかけだったのは有名な話。
アオキ へええ。
イワホリ ちょっと、今までのロックンロールの起源の話からは脈が逸れるんだけれど、もう一つのビートの進化って話で、挙げておきました。
アオキ いまだにJLP≒ビーチズが受け入れがたいわたくしなのですが。
イワホリ 一度、クラッシュ1stから順に聴いてみ?凄く自然な脱皮にみえるから。
アオキ ああ。そうか、ちょっとやってみる。
(まだまだつづくよ!)

エキシビジョン名物、イワホリの脚注。余談多し。
*1 TODAY
いいから見ろ。説明させんな。
*2 ダイノジ
"ナイトコール"然り、フジファブリック"銀河"然り、そしてJET"ARE YOU BE GONNA BE MY GIRL "然り、おおちさんのパフォーマンスがダンスフロアに与えた影響は計り知れないのですが、ロックンロール・リスナー、DJとしての大谷さんの知識と情熱とスキルこそが、ダイノジの真骨頂と改めて記しておきます。音楽について文章を書く人で、今一番信頼出来る人の一人。「
音道」要ブクマ!
*1 Revolution Rock
ちなみにいかにもジョーの歌詞っぽく語ってますが、この曲も、カヴァー曲です。クラッシュがカヴァーした名曲の数々はジャマイカン・ミュージックの老舗レーベル、trojanから
"revolution rock: the clash jukebox"というタイトルのコンピが発売されてます。ベースのポール・シムノンが解説を書いているという、言わば公式元ネタ集。

000 : ロックで踊りたい? 2008-07-01
001 : ロック2000年問題(1) 2008-07-02
002 : ロック2000年問題(2) 2008-07-03
003 : 8の字描くように 2008-07-04
004 : ClashをCheck It Out! 2008-07-05
005 : I Don't Wanna Be With You 2008-07-06
006 : 楽隊のメロディー。 2008-07-07


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